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【#001_読書】『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 読書感想とアートワーク

『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』装画アートワーク by suzu-iro

1/18(金)に、アメリカ文学作家J.D. サリンジャー氏の伝記映画ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーが公開されましたね。

恥ずかしながら彼の作品はどれも読んだことがなかったのですが、この映画を鑑賞する前にせっかくなので、もっとも著名な『ライ麦畑でつかまえてキャッチャー・イン・ザ・ライ)』を手にとってみました。
本作は主に、有名どころでは野崎孝氏と村上春樹氏によってそれぞれ異なる時代に翻訳されておりますが、迷いに迷って、今回は村上さんの方を。

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村上節のおかげなのでしょうか、この主人公ホールデン、社会を斜めに見ている厄介な男の子なのですが...、なんでしょうね、読む前にもともと持っていた彼の印象よりも、繊細で柔和で、上品さも見え隠れしているような印象に受け取れました。

それでは、本作を読んだ感想を少しと、この作品をイメージした装画を描いてみたので下に紹介します。

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『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』装画アートワーク by

学校を中退した16歳のこの少年、「あれは嫌い、あいつはインチキ野郎、これも気に食わない、こいつも生意気なやつ、早くオトナになりたい、女とヤリたい、酒飲ませろ、タバコ吸って何が悪い」などなど、四方八方に(心の中で)毒を吐き、大人ぶり、見下し、悪態をつきながら人と関わっていきます。物語は終始、彼のぼやきに始まりぼやきで終わる一人舞台です。

きっと誰しもが多かれ少なかれ不満や怒りや恐れを抱いていますが、特に多感な年代のころには、それを向ける矛先がはちゃめちゃだったり、じょうずに消化できなかったり、同級生よりも少し悪いこと・オトナなことをすることでちょっとでも抜きん出ることが、自分への慰めになったりしますよね。
だけど、ホールデンには尊敬する兄がいて、かわいい妹がいて、まともな父も母も健在で、根は優しい男の子です。だからこそ、普段はたいそう攻撃的でありながらも、ある部分の一線は超えられなかったり、誰かの優しい言葉がしみてしまったり、自分自身が恥ずかしくなってしまったり、そんなヘタレな自分が大嫌いだったり、色々なジレンマに苛まれて自由になりたくて仕方がなくて、いっそのこと、高いたかーい都会のビルの上から突き落とされてしまいたいような感覚に陥るのは痛いほどよくわかります。

そしてホールデンは、ライ麦畑で無心で遊んでいる子供たちが、その崖から落ちそうになるのなら、僕はその子たちが落ちないようにつかまえてあげる人になりたい(*意訳です)」と文中で語っています。このパラグラフが本作のタイトルにも繋がっているのですが、ホールデン自身が、もし道を踏み外しそうになっていたら誰かに手を引いてほしい、もし僕がビルの上からぐるぐると落ちてしまったときには抱きとめてほしい...という彼のある種のSOSに似たものをこの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』から感じ取れました。

『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』装画アートワーク by suzu-iro

もし、私が中学生や高校生のときにライ麦畑に出会っていたら、どんな感想を持っていただろう、とタラレバですが興味がありますね。

本書は結構読み込んだので、時間ができたら野崎氏訳の方も読んでみて、読み比べしたいと思います。

また、映画ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーも近日観に行く予定です。意外にも取り扱っている劇場が限られているようなので、いい時間を狙って。

それではまた次回まで。